本屋象の旅

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二年目を迎えて
2023.11.01

よく晴れた日の春先から秋にかけて、西日が窓をさす午後の時間、ロールスクリーンを下ろします。ここ数日で日ざしが届かなくなり、営業のあいだはずっと、窓からのぞいていただけるようになりました。たまたまではございますが、そんな季節にオープンしてよかったなと思いつつ、開店前の不安な気持ちをすこし思い出しながら、お店は二年目を迎えました。

 

あっという間にも、とても濃密にも感じる一年間でしたが、まずはお越しくださったお客さま、お店の運営に関わっていただいている皆さまに、深く感謝申し上げます。

 

あたりまえのことですが、お店は、お客さまが来てくださらないことには成り立ちません。応援の気持ちを込めてお買い求めくださるお近くの方や、わざわざ遠くから、お店をめざしてお越しくださる方、日々の暮らしの中に、お店に立ち寄ることを組み入れてくださっているお客さまや、手間と時間がかかるにもかかわらず、ほしい本があるとお取り寄せでの注文をしてくださるお客さま。そんな皆さまのおかげで、なんとかお店をつづけることができております。

 

ゆっくりと本棚を眺めながら、じっくりと本を選ぶお客さまの醸しだすお店の雰囲気は、カウンターに立っていてもとても居心地のよいもので、本を介したお客さまとのやりとりは、さほど言葉を交わさずとも何か通じるものがあり、あたたかい気持ちをおぼえます。すばらしい小説を読み終えたあとのような、余韻のたなびく心地よさを、お客さまをお見送りしたあとに感じることも多く、本屋冥利に尽きる日々を過ごさせていただいております。

 

ただ、たくさんのお客さまにお越しいただいてはおりますが、「本」という商品を、実際の店舗で売る、という業態をつづけていくことは、つくづくむずかしいものだなとも実感しております。

 

ここ一年を振りかえると、あまり前向きになれるようなニュースは聞こえてこなかったように思います。世界に目を向けると、戦争はおさまるどころか新たに勃発し、いたるところに火種もくすぶっています。その影響もあってか、物価の上昇はとどまることをしらず、ずいぶんと暮らしがたいへんになったように感じますし、先行きは不透明というか、あまり明るくはないように思えます。そんなときに、本など読んでいる場合ではないのかもしれません。

 

でも。だからこそ、という思いも、一年間、本屋として本に触れ、お客さまと接しながら、つよく感じております。「場」としての本屋は、あったほうがいいだろうなという思いは、この一年でさらにつよくなりました。本の持つ力、ことばの豊かさ、人や地域とかかわることや、その場があること。こうしたものが、いまの世の中にはおそらく必要なのだろうとの思いが、やっぱりどうしてもあるからです。

 

二年目も、どうぞよろしくお願いいたします。しばらくは日中ずっと、窓から本をのぞくことのできるお店で、本とともにお待ちしております。