本屋象の旅

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おいしいが聞こえる
2022.12.21

こんにちは。今年も残すところあとわずかとなってまいりました。年末年始に読む本は決まりましたでしょうか。骨太な小説に挑むのもよいですが、今日は気軽に楽しめる一冊をご紹介いたします。

 

 

 

 

「おいしいが聞こえる」ひらいめぐみさんによる「食」のエッセイです。とてもおもしろく読み終えました。「食」に対してきわめて真摯にアプローチしているにもかかわらず、その個性的な感性や味覚、嗜好によって絶妙に味付けされた文章で、ぐいぐいと読ませる一冊です。「食」に関するエッセイのよいところは、自分のことに置きかえやすく、ものすごく些細なことの記憶を呼びさますところかもしれません。

 

たとえばこの本の中に、「好きなものを最初に食べるか、最後に残すか」という内容の一章があります。ひらいさんがどちらなのかは本書を読んでいただきたいのですが、わたしが学生の頃、最初に食べる派のおもな言い分として、「食事の途中に何かコトが起きて(地球の滅亡だったか、戦争だったかはっきり覚えていませんが)、食事を断念せざるを得ないとき、好きなものを食べておかないと後悔する」というものがありました。今思うと、食べたとて、の感しかないのですが、昔はしたり顔で言われたものです。

 

ちなみにわたしはどちらでもなく、好きなものは食中まんべんなく食べる派です。今でこそ、野菜をはじめに摂ると血糖値が上昇しづらい、とか言われておりますが、昔は三角食べという、バランスの良い食べかたが推奨されておりました。その実践をしていたわけではなく、単純にいちばんおいしく食べられると感じていたのでしょう。

 

友人にひとり、メインのおかずを完全に食べてから、副菜、さいごに白米を一気に、という猛者がおりました。今ではどう食べているのか、すこし気になります。

 

「食」を通して、とても小さな、忘れていた記憶を思い出させてくれる、そんな素敵なエッセイです。単純に読みものとしてもおもしろいので、ぜひ手に取ってみてください。