本屋象の旅

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「ロシアのなかのソ連」「俳句が伝える戦時下のロシア」
2023.02.24

こんにちは。昨年の今日、ロシアによるウクライナへの侵攻がはじまりました。いまだ収束の気配は見えませんし、経済的な影響も受けておりますので、忘れているわけではありませんが、開戦当初の衝撃が薄らぎ、関心が薄くなってきているのも事実かと思います。

 

そこで、本日はロシア関連の2冊をご紹介いたします。著者・編訳は馬場朝子さん。馬場さんは1970年代、ソ連時代のモスクワ国立大学に6年間留学。帰国後、NHKに入局し、ディレクターとしてソ連・ロシアのドキュメンタリー番組を数多く手がけ、現在はフリーで活躍されていらっしゃいます。当然ながら、ロシア、ウクライナ双方に知人も多く、現在でもコンタクトを取り続けております。

 

まず、昨年9月に刊行された「ロシアのなかのソ連」をご紹介いたしましょう。こちらは馬場さんが留学期間や取材で接したロシアという国、ロシア人という人間について、さまざまな観点から語り、全体像を浮かび上がらせてくれます。

 

 

たとえば、ロシア人の気質や働きかた、アメリカへの本音、結婚・離婚事情といった「ひと」に関することから、ソ連時代のイデオロギーや宗教政策、国としての願望など、「国家」に関することまで、日本とはまるでちがうロシアという国の特徴について、大まかなアウトラインをわかりやすく解説し、読む前よりも、ロシアの人たちの体温を感じることができる気がします。

 

広大な領土。攻め込まれた歴史と、最終的に国としては負けていない歴史。革命と冷戦。さまざまな要素が複雑に折り重なり、今のロシアという国をかたちづくっているのだということが、よくわかる一冊です。

 

次に、発売されたばかりの「俳句が伝える戦時下のロシア」を、さわりだけご紹介いたしましょう。

 

 

「ロシアで俳句?」と思われる方も多いのではないでしょうか。わたしもこの本を読むまでは知りませんでした。くわしくは本書の冒頭に書かれておりますので、ぜひお読みいただきたいのですが、俳句はソ連時代から親しまれているとのことです。そもそも、芸術面、とりわけ詩への造詣が深いお国柄。俳句が好まれるのも、きわめて自然かもしれません。この本には、ロシアの俳人たちへのインタビューと、その作品が掲載されております。

 

今、ロシアでは、ウクライナへの侵攻を、「戦争」と表現することが法律で禁じられております。言論統制が進み、表現の自由が制限されたロシアという社会。俳句という、音節を制限することで表現の広がりを生み出す世界。みずからの危険を承知で発信された言葉の重みを、この本から受け止めずにはいられません。

 

そして、何よりも馬場さんの本を読んで思うのは、「戦争をしている(しかけた)国の人間が、必ずしも戦争をしたいとは思っていない」ということです。

 

生まれた国、住んでいる国のことを考えることも、世界で何が起きているのかを知ることも、どちらも大切なことでしょう。ぜひ、手にとっていただければと思います。