本屋象の旅

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読書からはじまる
2022.11.23

こんにちは。皆さんは最近、本を読んでいらっしゃいますか。わたしはここのところ、じっくりとは読めておりません。本屋を開くためにいろいろと動いていたのと、考えなければいけないことがたくさんあって、とても読書どころではありませんでした。本を読みたかったら本屋になるものではない、とはよく聞くことばですが、はたしてこの先どうなるでしょうか。いずれにせよ、心にどこか余裕がないと、本は読めないものなのかもしれません。

 

 

長田弘さんの「読書からはじまる」(ちくま文庫)という本があります。詩人である著者が、本とは、読書とは、そもそもことばとは何かについて、これ以上ないほど優しく美しいことばで語りかけてくれます。あとがきでは、「人は読書する生き物です。人を人たらしめてきたのは、そう言い切ってかまわなければ、つねに読書でした。」とまで述べています。

 

ぜひ手に取っていただきたい本なのですが、その反面、最近は本が読まれなくなった、と言われ続けております。経済情勢の変化、情報インフラの進化、ライフスタイルの変容など、その要因もまた、挙げればきりがありません。個人的には、便利さへと向かい続ける技術革新の恩恵をこうむっているうちに、ヒトの時間に対する感覚が変わってきた。これが一番の理由かなと感じております。

 

何か知識を得たいときも、単純におもしろい経験をしたいときも、より短時間で効率的に、ということを重視する方が増えているのでしょう。映画ですら配信で倍速視聴する世の中です。本なんて、読むのもまどろっこしいし、そもそも役に立つのか、おもしろいのかも、読んでみないとわからない。抜群にコスパが悪いというわけです。

 

これは、ある一面では、実によくわかります。私も本屋をいとなみたいと思うくらいには本が好きですが、読むのは遅いし、読んでいる途中でつらいと感じることすらあります。眺めるだけで楽しい作品もあるにはありますが、本はたいてい読み終えるのに時間がかかりますし、読み解くのに頭を働かせなくてはなりません。なかには読んだ、とは言いきれないほど、モヤモヤとしたままさっぱりわからないものもしばしばあります。

 

ただ、本を読んだあとに、たしかに感じたことのある感覚。数ある選択肢のなかから、本を読むという行為に時間を費やし、ようやく読み終えて、胸に残るなんとも言いがたい感情。今までの、その本を読んでいなかった自分には、けしてたどりつけなかったであろう考えかたをしている自分。そんなことを経験してきたからこそ、本を読むのかもしれません。

 

長田弘さんは、「本を読むことが、読書なのではありません」とも述べております。では何が読書なのでしょうか。どうぞ「読書からはじまる」を、手にとってご確認ください。