本屋象の旅

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文学は予言する
2023.02.20

こんにちは。今日はこちらの本をご紹介いたします。著者は鴻巣友季子さん。先日ご紹介した「韓国文学の中心にあるもの」の斎藤真理子さんに続き、数多くの翻訳を手掛ける鴻巣さんによる文学論であり、文学論を越えたなにか、です。

 

 

 

まず、鴻巣さんの圧倒的な読書量と、その読みの深さに唸らされます。専門とされる英語圏の文学に限らず、日本の作家さんの作品も広く読まれており、文学ガイドとして大変参考になります。読んでいなかった本は読みたくなり、読んでいた本は「そういうことなのか」と、再読したくなります。

 

 

また、構成も見事です。「ディストピア」「ウーマンフッド」「他者」とテーマを掲げ、それぞれのテーマに沿った作品を紹介。タイトルである「文学は予言する」のとおり、リアルな世界で表面化する問題を、いちはやく文学作品が扱っていたことを、丁寧に解説してくれます。

 

 

発表当時はSF小説やファンタジー小説と見なされていた作品が、時代を経てディストピア小説と位置付けられる。果たして時代がどう進んでいるのか、少しずつでもよくなっているというのは本当のことなのか、とても考えさせられます。

 

 

世界を見渡しても、日本だけを見たとしても、切実に感じられる「この世の中、なんか間違っているのではないか」感。この本は、いったい何が問題なのかを、文学作品の解説を通してやさしくひもといてくれます。

 

 

力を持つ者にこそ読んでいただきたいですが、大人の課題図書として、少しでも多くの方に手に取っていただければと思う一冊です。