本屋象の旅

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「象の旅」トークイベント ~木下眞穂さんをお迎えして~
2023.04.24

こんにちは。今日は4月22日に開催された「象の旅」トークイベントにつきまして、すこし書いておきたいと思います。

 

 

本屋象の旅での、初イベントです。「象の旅」翻訳者の木下眞穂さんが、オープン準備中のツイートを見つけてくださり、オープン間もなくご来店いただいたことからご縁をいただき、この会を開催する運びとなりました。ご多忙にもかかわらず快くお引き受けくださり、あらためて感謝申し上げます。また、当日は「象の旅」を編集された書肆侃侃房の藤枝大さんが、わざわざ福岡から駆けつけてくださいました。出版、編集面のお話をサポートしていただき、懇親会までお付き合いくださいました。あらためてお礼申し上げます。

 

参加者は、応募開始からまもなくお申込みいただいた15名の皆さま。当日、おひとりのキャンセルがございましたが、木下さんとご一緒にポルトガルに留学されていたご友人がお見えになり、そのままご参加いただくことになりました。

 

さて、いざ本番です。事前に参加者さまからいただいたアンケートをもとに、「象の旅」に関する話題はもちろんのこと、ポルトガル語を学び始めたきっかけや、ポルトガルの文化や風土、ポルトガル語の特徴など、さまざまなテーマについてお話をしていただきました。

 

なかでも、翻訳というお仕事に関するお話は圧巻でした。翻訳をされる際にたいせつになさっていることや、作家による文体の違い、いき詰まったときの対処法など、原作と翻訳作品の具体的な該当箇所を挙げながら、わかりやすくご説明いただきました。

 

気がつくと、あっという間の90分。まだまだお聞きしたいこともありましたが、木下さんの朗らかで率直で、ときおりユーモアも交えながらの熱のこもったお話に聞き惚れているうちに、終了の時間を迎えておりました。

 

参加された皆さまも、熱心にメモを取られたり、ときに大きくうなずかれたりといった姿をお見受けしましたが、静かな高揚感というか、本屋ならではのグルーヴ感のようなものが、小さなお店の空間に満ちていたような気がします。人が集まることで生まれる力を、あらためて実感することができる時間となりました。つたない進行にもかかわらず、木下さんのパワーで会場を包んでいただいたのだと思います。

 

もともと本を読むことが好きで、語学を学ぶことも好きだったという木下さん。お話をうかがったうえで翻訳された作品を思い返すと、よくぞ素晴らしい日本語の文芸作品に仕上げてくださった、という感謝の念しかありません。原作の良さあってこそですが、翻訳もまた、創作、創造の業としか思えないからです。

 

 

「『その他の外国文学』の翻訳者」という本があります。木下さんをはじめ、英語以外の海外文学を翻訳されている方に光をあてた、とてもおもしろく興味深い本なのですが、翻訳する言語はもちろん、学ぶきっかけや考え方も、ほんとうに人それぞれ違います。ただ、いいものを伝えたいという思いと、とかくひとつの方向から見てしまいがちな世界を、別の方向から見てみることも必要だとの思いは、根底で共通しているように思えます。

 

到底読むことのできなかった海外の作品を、気軽に日本語で読める時代。その点においては、今がいちばん幸せだと言えるかもしれません。翻訳者の皆さまに感謝しつつ、すこしでも広く読まれてほしいなとの思いで、お店の本棚に並べております。

 

今回ご参加いただいた皆さまも、どうもありがとうございました。また、小さな本屋で開催することのできるイベントも、少しずつ考えていきたいと思います。本を介して何かが生まれるような、そんな集まりができたらいいなと思っております。